KEIがやって来て、わたしに謝罪している。
「仲間に連れて行かれて」結果、フーゾクを「初体験」してしまったことを謝っているのだ。
「ゴメン。もう、絶対、行かない。好きなのはきみだけだし、きみの方がずっとイイ。きみしかいない、って、改めて思う。」
きみの方がずっとイイ。イイ、というのは何のことだ?。
ナニのこと、ってわけ。そんなん、プロの方が上手に決まってるじゃん。
「ゴメン。ほんと、この通り。」
なーんて言って、土下座までしちゃったよ。
部屋にはエアコンが無く、扇風機がのんびり回っている。大きな男が丸くなったから、さっきまで遮られていた生ぬるい風が、わたしの頬を静かに撫ではじめる。
「涼しい・・・。」
「えっ。」
「さっきまであなたのかげになってて、風、来なかったんだよね。」
「あっ、えっ、ごめん、気が利かなくて、スンマセン。」
がたがたと不器用に扇風機の位置をずらす。
「・・・って言うか、あなたがそこをどいたらいいんだよね。」
「あ。」
「・・・出てってよ。」
「えっ・・・。」
わたしは、絶句する恋人を冷めた目で見ている。
頭の中に浮かんだのは、将来子供をもつとしたら、絶対女の子がいいな、ということだ。
男の子はつまんないな。
自分が一生懸命に育てた愛する息子が、こんなふうにカンタンに女相手に土下座して、しかも、つまり、これからもヤらせてくれ、と懇願して・・・KEIのお母さん、これ見たら泣いちゃうよ、きっと。
最も、KEIの腕力をもってすれば、今わたしの部屋でふたりきり、という状態なんだからむりやりどうにでもできちゃうわけでは、ある。
オトコとオンナ、こういう場合、強いのはどっちだ。
「・・・ゆるしてくれよ。どうしたらいい?。」
「別に、フーゾクへ行ったことを怒ってるんじゃないよ。」
「じゃあ、なんでオレがキスしようとしたら逃げるんだよ。」
「・・・なんか、不潔、って感じかな。」
「別にそんなにヤバイ店には行かなかったよ。」
「そういうことじゃないの。つまり、うん、そういうヤラシイことしかアタマに無いのか、ってことが、不潔なの。」
「だって、仕方ないじゃん。」
高校時代のボーイフレンドに、
「抱いて。」
って言ったら、
「どっちの意味?。」
って、鼻息荒く聞かれたっけ。単に、ぎゅっ、て抱きしめて欲しかっただけなんだけど。
この年頃のオトコの、ヤリタイ願望ってのは、食欲って感じだね。とにかく入れたい、イキたい、早く早く。
こんなにものすごい爆弾を抱えて、よくもまあ、勉強したり、運動したりまじめにできるもんだなあ、とは思う。ややソンケー。女にはできないだろうな。

なーんて考えてたら、なし崩し的におおいかぶさられてしまった。
暴れてみようかな。
でも、余計に強い力でおさえこまれるだけだった。
「・・・すきだよ。」
それは、ヤリタイよ、と同義語ではないだろう か。という風にしか聞こえないよ、今日は。
でも、まあいいか、暑いからめんどくさいし。
それに、たぶんわたしは、スキなんだ。
KEIの、ことが・・・カラダが、ね。

仰向けになって服を脱がされながら、何気なく窓の外を見ると、ヒラヒラとアゲハ蝶が舞っている。一匹だけのように見えたけれど、よく見ると二匹、もつれあうように、じゃれあうように高く高く舞いあがりながら、空へ向かっていく。
高く、高く、か。
KEIの指がパンテイにかかり、隙間から入ってくる。しばらく弄んでいるのは、わたしを気持ちよくさせようということらしい。
で、そっと口が近付いてきた。
舌が、入って来た。目を閉じる。・・・あの、しびれだ、来た、来た来た・・・。

楽園の地図ひるがえりアゲハ蝶
・・・これ、かな。イクっていうのは。
恥ずかしくて、くすぐったくて、あふれそうで。
たかく、たかく、もっとたかく。
「・・・もっと・・・。」
こうなったら、楽園をさがしに行ってみよう。
わたしの中の、眠れる楽園。
オトコにとことん付き合わせるのも、今日ならゆるされるだろう。
「もう、入っていい?。」
オトコの懇願が、また聞こえるけれど、
「だめ。」
冷たく言ったつもりが、あえいでしまう。
あのアゲハたちは、愛し合いながら空のどの辺りまでのぼりつめただろう?。

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