暮れやすし空の丸みをいとおしむ

秋の夕暮れ。
わたしは、西の空を見ている。
どこか柿の色を思わせる空は、うっすらと雲を一面にたたえて、海に広がる。
水平線の向こうまで、やわらかく続く柿色の空は、球体。やっぱり地球って丸いんだな、などと思う。

男と女も、生まれる前、ひとつの球体だった、というのはどこで聴いた話だったか。

神様の決められた一つの球体は、半分にされて、この世に送り込まれる。
だから、男は、女を。
女は、男を。
自分のなくした半分を探して、恋をする。

ベターハーフ。

やがて、ぴたりと見事に自分の半分を探し当てたふたりは結ばれ、しあわせになるのだという。

自分にとっての「なくした半分」を探し続けていた頃、恋をするたびに、この人こそ、と思い、そして、いろんな理由で恋が消え、また違った、わたしの半分はどこなの!と、必死で探し・・・。

・・・結婚した。

ベターハーフ、が、ベター、であって、どうして、
ベストハーフ、
とは言われないのだろうか?と不思議に思ったのは、結婚してからである。

完全なる球体、ならば、ベスト、では無いのか?
ベター、というのは、わたしの思い違いなのか?

・・・いや、正解は、やはり、ベター、なのだ。

どうして、結婚する相手が「最愛」だと思うのだろう?。
最も恋した、ということと、ひとつになる、ということは、必ずしも、ぴたりと結びつかない。
ベター、くらいがちょうどいいのだ、生活していくのには。
ベスト、ではいけない。
生活というのは、ふたりだけで成り立つものではない。
ふたりが核であっても、そこに、周囲の色々な人たちの入れるゆとりが無ければならない。
ベスト、では無く、ベター、だからこそ、そこに幅が生まれて他人を受け入れる・・・子供たちだって二人以外の他人であることは違いない・・・ことができるのだから。

秋の夕暮れ。
あっと言う間に夕闇に支配され、海は、ひたひたと黒くなる。
思い出されるのは、背中ばかり。
たぶん、ベストハーフ、はどこかにあったのだ。

でも、それで、しあわせになれたかどうかは、わからない。

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