はっ、として目覚めた。
枕元の時計は、午前三時。
どこかで、風の音がする。
何かの気配がして、急き立てられるような感覚に襲われたのは、そうか、窓の外で吹き荒れる風のせいだったんだ。
間違っても、電話が鳴ったせいではない。
彼とは、唐突に終わった。
先先週、駅のホームに立っていた彼の人差し指は、列車内にいるわたしの目の前の窓に、
大きくハートを描き、口元には「あいしてるよ」の言葉が大きく浮かんでいた。
でも、それが、最後になってしまった。
まったく通じなくなってしまったメール、電話。
やっと聴いた彼の声は、戸惑いながら、
「どうか、なってしまった。」
と、震えていた。
「ずっと、君のことしか見ていなかったのに。
気になるひとが、できてしまった。」
わたしは、早々に電話を切って、そのまま駅に向かうべきだったのだろうか。
あるいは、いつかそうしたように、自分の小さな車に乗り込んで、百キロの道を飛ばすべきだったのだろうか。
風の音は続いている。
季節外れの台風が近付いていると、そう言えば夕方のニュースが告げていたっけ。
枯れ葉たちが狂ったように木からもぎとられて吹き飛ばされていくのが、目に浮かぶ。
夜の中で。
率直に言ってしまうと、彼とのセックスは余りよくなかった。
別に、へた、とかそういうんじゃない。
自分本位では無かった、いつでも優しくて暖かだった。ただ黙って抱きしめられているのなら、それでもよかったのだけれど。
もうこれは、わたしのわがままだ。
一人の男にそう何もかも望んではいけない。
あるいは、相性のようなもの、かもしれない。
何度も別れたのは、根底にそれがあったからなのだ。認めたくないけれど。
そして、いつも、彼の方から、やり直そう、と言ってきた。そういうことが、ここ数年続き、そして、ついにこの前、プロポーズされた。
彼が挨拶に持ってきた、日持ちのいいおせんべいは、今でも家の居間の押し入れにある。
でも、もういいのだ。
ここらで、いいのだ。
気になるひとができた、と聞いた時に、
ほっとしてしまったのだから。
木枯らしに弄ばれて夜更けかな
胸の中にも、風は吹いている。
愛情もさほど感じずにいて、それでも悲しみに似た想いに囚われて眠れそうに無い。
明日、朝日の中で、たくさんの枯れ木を目にすることになるだろう。
冬を前にして、何も持たずにいることになったわたし。
葉を失った木々を見て、慰められるのだろうか。
わたし、そんなわたしは嫌いなんだけれど。
枕元の時計は、午前三時。
どこかで、風の音がする。
何かの気配がして、急き立てられるような感覚に襲われたのは、そうか、窓の外で吹き荒れる風のせいだったんだ。
間違っても、電話が鳴ったせいではない。
彼とは、唐突に終わった。
先先週、駅のホームに立っていた彼の人差し指は、列車内にいるわたしの目の前の窓に、
大きくハートを描き、口元には「あいしてるよ」の言葉が大きく浮かんでいた。
でも、それが、最後になってしまった。
まったく通じなくなってしまったメール、電話。
やっと聴いた彼の声は、戸惑いながら、
「どうか、なってしまった。」
と、震えていた。
「ずっと、君のことしか見ていなかったのに。
気になるひとが、できてしまった。」
わたしは、早々に電話を切って、そのまま駅に向かうべきだったのだろうか。
あるいは、いつかそうしたように、自分の小さな車に乗り込んで、百キロの道を飛ばすべきだったのだろうか。
風の音は続いている。
季節外れの台風が近付いていると、そう言えば夕方のニュースが告げていたっけ。
枯れ葉たちが狂ったように木からもぎとられて吹き飛ばされていくのが、目に浮かぶ。
夜の中で。
率直に言ってしまうと、彼とのセックスは余りよくなかった。
別に、へた、とかそういうんじゃない。
自分本位では無かった、いつでも優しくて暖かだった。ただ黙って抱きしめられているのなら、それでもよかったのだけれど。
もうこれは、わたしのわがままだ。
一人の男にそう何もかも望んではいけない。
あるいは、相性のようなもの、かもしれない。
何度も別れたのは、根底にそれがあったからなのだ。認めたくないけれど。
そして、いつも、彼の方から、やり直そう、と言ってきた。そういうことが、ここ数年続き、そして、ついにこの前、プロポーズされた。
彼が挨拶に持ってきた、日持ちのいいおせんべいは、今でも家の居間の押し入れにある。
でも、もういいのだ。
ここらで、いいのだ。
気になるひとができた、と聞いた時に、
ほっとしてしまったのだから。
木枯らしに弄ばれて夜更けかな
胸の中にも、風は吹いている。
愛情もさほど感じずにいて、それでも悲しみに似た想いに囚われて眠れそうに無い。
明日、朝日の中で、たくさんの枯れ木を目にすることになるだろう。
冬を前にして、何も持たずにいることになったわたし。
葉を失った木々を見て、慰められるのだろうか。
わたし、そんなわたしは嫌いなんだけれど。
コメント