汗sono

2003年7月10日
 人工島の真ん中を流れる人口川のほとりで、若者がひとり、黙々と花の植え替えをしていた。
 首の辺りまでの茶色い髪、両の耳にシルバーのピアスが光る。クリーム色のTシャツ(もしかしたら白)は背中に張り付き、その上には、梅雨の雲が晴れた昼下がりの空から、熱っぽい日差しが容赦なくふり落とされている。
 若者は、なぜかたったひとりで植え替えを続けている。
 10個ほどあるプランターからプランターへ。
 オレンジ色のマリイゴールドが、青白いデルフィニュームに取って替えられる。分厚い手の下の淋しい色の花びらの上に、汗がひとつぶ落ちた。
 すぐ近くで、少年の歓声。
 気の早いインターナショナルスクールの金髪の少年たちが、川で水遊びをしているのだった。

    ひとすじの汗その先に青い花

 今年初めて見た、したたり落ちる汗。もうじき、夏。

 いきなり話が変わるが、「ベルサイユのばら」を読み直した。
 初めて読んだのは、確か10才そこそこだった。
 11才で結婚させられそうになって母親に反発する、シャルロットという人物に妙に肩入れしたから覚えている。
 その後、高校時代に一度読んだ気もするが、なぜだか突然急に読みたくなり、文庫版を買って読んだ。
 ああ、こういう話だったのか。
 初めて、本当のストーリーをとらえられた気がする。以前、何の気無しに読み過ごしてきたところが、ものすごく心に響く。
 とりわけ「オスカル」を、ようやく本当に理解できた気がする。彼女の「享年」年齢に近くなって初めて・・・。
 再読、というのもいい。
 これは劇画だが、小説も、一度読んで分かった気にならない方がいいのだろう、たぶん。
 童話の「小さいモモちゃん」シリーズを、今、娘に読み聞かせているのだが、こちらも再読である。今、声に出して読んでみると、改めて、作者の日本語のあたたかさ、心地よさ、そして柔らかな語り口を通して、人生の真が其処此処にちりばめられているのが分かる。
 何度でも出会える本、そして、読むたびに何かが見える、そういうのを名作、というのだ、きっと。

 ところで、娘と言えば。
 リーコ5才が、「ベルサイユのばら」の表紙をしげしげと眺めていた。
 文庫版は全5冊で、いずれも表紙には薔薇の花が色違いでひとつずつ描かれているのであるが、そのうちのひとつを指差し、
 「これ何?レタス?。」
 と、聞いた。
 緑色の薔薇、だったからだが、なんか笑えた。
 ベルサイユのレタス。
 早くアンタと内容について語りたいぜ。
 

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