実家から、大きな宅急便が届く。
 内容のところには「野菜」とある。でも、本当は「新じゃが」であるのをわたしは知っている。そういう、季節だ。
 京都で寮暮らしをしていた頃、やはり今頃こうしてじゃがいもが送られて来たのだが、伝票に大きく、
 「米、いも」
 と書いてあって、当時は花も恥じらう19才の娘には、それがとてつもなく恥ずかしかった。それで文句を言って以来、じゃがいもであっても、新米であっても、そこには「野菜」と書かれてある。
 最も、じゃがいもが十いくつも詰まった箱を片手で肩に担ぎ上げられるほどたくましくなった現在、たとえ伝票になんと書かれてあっても、もうどうでもいいのではあるが・・・。
 
 中を開けると、じゃがいもだけでは無かった。きゅうり、ミデイトマト、茄子、夏大根、そして、娘たちにチョコレート、である。それがほんの少しずつ、きちきちっと詰められている。自然に実家の畑を思い出す。
 畑、と言っても、プロの農民では無い。父親が趣味でつくっている畑であるが、そこはB型らしくこだわりがあり、わたしたち子供は、迂闊に侵入できなかった。無農薬にこだわり、草取りも自分でする。苗選びから水やりから収穫まで、そこは父の「王国」である。
 だから、当然、野菜はどれも不格好で、畑仕事に慣れない人が見たら、信じられないような形のものもある。しかし、とにかく、味はいい。
 じゃがいもは、コロッケにすることにする。
 きゅうりは、早速サラダにする。星型の黄色い花つきだ。娘に見せたら、全く驚かない。幼稚園で育てているのだそうだ。
 そう言えば、園の庭の端に、そういう夏野菜のスペースがあったような気がする。
 娘は得意げに、
 「そいでね、お茄子もあってね、お茄子はね、お花が紫のお星様みたいなんだよ。」
 と、言いながら、七夕のときにこしらえた飾りを持って来る。
 「ほらね、こんなん。」
 手にした短冊には、一面、紫のクレヨンで塗られた茄子の実、そして、花の芯に黄色い色をぽっちりと乗せた、茄子の花が描かれている。
 「ふーん。よく見てるやん。」
 感心して見せると嬉しそうにしている。

   星いくつ落ちて咲きたる茄子の花

 しかし、娘たちに、茄子料理は不評なので、翌日のカレーに細かく刻んで煮込むことにした。

 
 それにしても・・・。
 宅急便を持って来てくれるお兄さんたちは、荷物をこちらに渡すときに、必ず、
 「大丈夫ですか。重いですよ。」
 と、声をかけて下さるのだが、持ってみると、ほとんど、大して重くは無いのである。よその奥様は、そんなにかよわくていらっしゃるのであろうか。
 決して並外れた怪力とは思っていない(思いたい)ので、それはきっと、わたしの見た目が華奢で、箸より重いものなど持てそうにないみたいに見えるのだろう、ということにする。(しかし、Mサイズのシャツのぴったりスリーブがきつかったりする。)

  

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