そのひとの夢ばかり三晩続けてみている。
 一日目には、気にしなかった。
 寝る前に「白い巨塔」なんか見たせいだろうな、と思った。
 そのひととは、彼が医学生時代に一緒に過ごした間柄だった。
 当時も、かなり人気のあった「医師もの」のテレビドラマがあった。ドラマについて、あそこは本当はどうなんだろうとか、いくらなんでもあんなことはありえない、とか色々話していた。だから、反射的に「医師・病院もの」のドラマを見れば、彼を思い出す。そういうことだ。
 しかし、また翌日の晩、というか正確には早朝、目覚める直前にまた彼が夢にいた。
 そして、また、夕べも彼を夢で見た。
 もっとも、夕べは彼の姿を捉えていたわけではない。
 ただ、探していた。
 わたしは、どこかわからないが、群集の中の一人となって、同じく群集の中のどこかにいる彼を探していたのである。
 みつからない、みつからない。
 このひとじゃない、あのひとでもない。
 探す理由はわからない、だけど、ひたすら、必死で探していた。

 どちらかというと、これは悪夢であった。
 目覚めも悪く、大汗をかいていた。

 数えてみれば、ここ十年近く話すらしていない。
 もちろん、手紙も、メールも交わしていない。
 時々、思い出すことはあるけれども、それだけの、ひと。
 今更、どうして「探す」ことがあろう。
 とは言え、気になるので、パソコン検索で、彼が十年前、初めて医師として赴任した病院のホームページを探したら、そこにはちゃんと、彼の名前が、あった。
 彼は、名古屋のひとだ。
 医者になるために入った医科大が、わたしの生まれた町の近くにあった。
 国家試験に合格して名古屋に戻った彼は、今もそのまま、同じ病院で勤務している。
 そういうことが、分かった。
 
 夢が語ることが、もしもあるのだとすれば、それは彼の方から何かを発信しているのでは無くて、わたしの中の何かが、彼という登場人物を通して何かを語っているのだろう。
 それが何なのか、分かりたいような、でも実は分かりたくないような・・・。

   探し人見つからぬまま冬木立

 

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