春暁の水はゆっくり飲みなさい

 
 そのお寺に行って、どうしてもお参りしなければならない。
 でも、一歩、境内に足を踏み入れたとき、足元に水が押し寄せてくるのを感じた。
 それは、なま暖かくて、ゆっくり、たっぷりした温泉みたいな水で、よく見ると少しずつ嵩が増えているのだった。
 日暮れが迫っている。
 暗くなるまでに、本殿にたどり着けるだろうか。
 不安。

 そんな、夢を見て目覚めた。
 午前五時前。

 

 彼に会うと、その後数日間はいつも、どことなく上の空。
 片想いだから、伝えられない想いが整理つかなくてあふれる。
 それは、何かのフェロモンに似ているのだろうか。
 彼に会うと、なぜだかその夜はいつも、夫にのしかかられる。

 夕べは、とりわけ執拗だった。
 はらいのけても、はらいのけても指が追いかけてくる。
 狭いベッドの上のぎりぎりまで逃げて、どうしても嫌だと思った瞬間、太い腕をひっぱたいてしまっていた。

 明け方のベランダは、なぜかとても風が強くて。
 それも、どうして、こんなに暖かな風なのだろうか。
 ふと何気なく見たパジャマの胸元のボタンがほとんど外れている。
 かなしくなるよ。

 部屋に戻って、水を飲む。

 ひとりきりの想いで、熱くなる胸の火を消すために。
 満たされない心を、満たすために。

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