ほろ酔ひの開花前夜の桜かな

  春めいて、日暮れが遅くなって、お日さまはうっとりと西の空で光を舞わせながら、何かたくらんでいる?。

  「夕暮れ時の空の色が、カクテルみたいだよ。
  ピンクと、ヴァイオレットとが、リキュールめいて目に映る。
  とろけそうに甘い色だよ。」

  ・・・と、メールを打つ。

  「そうだね、こんな夕暮れに何か似合うカクテルがありそうだよね。でも、きみはお酒は呑めるのだった?。」

  「いいえ。
  体質ですから、仕方ありません。お付き合いできなくて残念だけど。」

  「そう。じゃあ、ひとりで酔うことにするよ。」

 ・・・小さな画面の整った文字だと、とても味気なく思える返事。このまま引き下がるのは、ちょっと悔しいかな。

  夕暮れに吹く風がとても甘いのは、なぜだか知っている。
  冬の間、丁寧に折りたたまれていた桜の花たちを、目覚めさせるためなんだ。 
  だから、ほら、よくみると桜並木の木はどれも、どこか、うすく発光しているでしょう。
  まるで、酔っ払い始めたかのように。

  「お酒を呑ませれば、口説けるとでもいうのなら、少しは無理にでも付き合うんだけど。」
  仕掛けてやった。
  「うん、呑ませれば口説けるよ。」
  「呑めないと口説けないってことでしょ?」
  「そんなことは無いよ。・・・試してみる?。」

  液晶だけで、恋を動かせるかしら。
  夕暮れの甘い風の中、ほろ酔いの、桜の下の、駆け引き。
  

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索