卒園
2004年3月17日 リーコとチョーコのお話原石をひとつずつ抱き卒園す
リーコ、卒園。
そもそも赤ちゃんの頃から、保健所で厳しくチェックされるような子供だった。発育が遅い、言葉が出ない・・・。三年保育にしても、大丈夫かな、とぎりぎりまで悩んだ末の入園だった。
入園式では、年中組のお遊戯の、恐竜のコスチュームがこわい、と言って大泣きしていた。
小食で、給食が多いと泣いていた。お弁当も少なめにしないと食べ切れなかった。
言葉も相変わらず遅かった。
「こいのぼり」の唄は、「おとうさん」のところしか唄っていなかった。
それが三年経って、みちがえるほどにたくましくなった。
鼓笛で、物干し竿なみのガードを振り回して歩けるほどに、発表会で、全曲を一人でも歌って踊れるほどに。給食をクラスで二番目に食べきれるほどに。
わたしは、何もしなかった気がする。
ただ、立ち会っていただけ。
日々、そのときにやらなきゃいけないことに追われていただけ。ただ、それをこなすことに必死だっただけ。
見えない手が、たぶん助けてくれていたのだろう。
丈夫で、三年を通して、欠席したのは五日ほど。
幼稚園が、大好きだった。
先生に、思い切り甘えられる子で、お迎えに行くと、必ずと言っていいほど、誰かの先生に抱っこされているような子供だった。しあわせだったね、三年間ずっと。
卒園式で、いつもはやんちゃばかりしている男の子たちが、しきりに涙をぬぐっているのが、胸に響いた。
人生は、さよならの繰り返しなんだよ。
でもね、さよならしたくない、と思えることに出会えることは、とても大きな喜びなんだよ。
自分にも、言い聞かせて。
春風が、いっぱいに園庭に吹き渡っている。
卒園の子たちの胸につけられた花が、微かに海風に揺れていた。
あなたたちは、ダイヤモンドの原石。
胸にひとつずつ、備わっているのが見える気がする。
これからも、たいせつに守っていきたい。そんな、殊勝な母親になったひとときだった。
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