入学式リボン揺るるは孵化のごと

 入学式。
 先日まで、幼稚園の「年長」だった子供たち、そこでは、「いちばんのおにいさん、おねえさん」として、それなりに厳しくしつけられ、毅然と行動することを言い渡されていたのだが、それが嘘のよう。
 小学校では、何という幼さ。

 それでも、椅子にかけてピンと伸びた背筋に、彼らの集団生活が、ここから始まるのではないことを、かろうじて感じ取る。
 新しい、スタート。
 
 六年生に手を引かれての入場。二年生の歓迎の合唱。
 その落ち着きと、まとまりに向けて、今から新しい生活に入る。

 少女たちは、おしなべてリボン。
 髪や、服の上で、揺れる。
 式が終わって駆け出した校庭のあちこち、花吹雪の中で、くるくると回る姿。そのどこかで、ヒラヒラと揺れる。
 
 生まれたばかりの蝶のように。

 

 卵のあなたをあたためて育てた。
 やさしく揺り動かし、あたためて慈しんで。
 時に、放り出したくなっても、そういう自分を責めながら世話を繰り返した日々。
 まだ、羽根は乾ききっていないけれど、もう、ひとりで飛べるんだよ。
 あなたの、蜜を探して行きなさい。
 あなたの、仲間をみつけなさい。
 あなたの、行きたい場所を考えて。
 そうしていつか、
 あなただけの王国にたどりつきなさい。

 生まれたばかりの、蝶に向かって、春の風はやさしい。

 

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