アザレア
2004年4月26日 内科医レインと人妻フィーネの物語ーツ・ナ・ガ・ル アザレアの波の甘さにたちすくむ
つつじの花が、気が付くと街中にあふれていて驚く。
この花たちの開花準備が、真冬のうちから始まることは知っている。小さな小さな突起が、枝の先に据え付けられて寒風に震えているのを、時々見ていたから。
そうして、その固くねじられたものが蕾であることがはっきりと分かるくらいになると、春。
しかし、その頃の街の主役は桜、つつじたちは、ひっそりとその足元で出番を待つ。
つつじミサイル。
柔らかな布をきゅっとねじ上げたような、蕾の群れ。
花散らしの雨が降り、暖かな風が吹き荒れ、そうして、ある夜、いっせいに開く。
街は、つつじの国になる。
「好き、って言って。」
「好、き。」
「もう一回。」
「・・・好き。」
唇をむさぼりあいながら、好き、と何度も言わせる。
好きだから、好き、って言うんじゃないんだよ。
好き、って繰り返しているうちに、本当に好きになっていくんだよ。
あなたの上に身体を重ねながらそう口にすると、あなたのきれいな二重の瞳が優しく揺れて、笑顔になって、
「・・・好きって言わせようとしてるな。」
と、ささやいた。
そうよ。
好き、って言わせようとしてるよ。
好き、って言わせて、好きにならせて、その先に何があるのか、何も無い。
いつか、結婚する気があるのなら、そういうテクも覚えておいた方がいいよ・・・・。
そんなことを言おうとして、いたずらな指につかまってしまって、もう何も言えなくなる。
目を閉じて広がる、つつじの群れを感じる。
身体を重ねる関係に落ちていくことが開花なら、その先は、散るだけのこと。
真冬に出会い、ひとことずつふれあい、そうして開いたふたりであれば。
いずれは、散るただそれだけのこと。
梅雨の雨に打たれてみにくく茶色に変色し、もうそこに鮮やかな花の群れがあったことさえ忘れられる、そういうことだ。
好き、って言いなさい。
わたしを大輪の、真っ赤なアザレアにして。
あなたの気まぐれな腕の中で。
激しく揺さぶられて、雄雄しい花になる。
つつじの花が、気が付くと街中にあふれていて驚く。
この花たちの開花準備が、真冬のうちから始まることは知っている。小さな小さな突起が、枝の先に据え付けられて寒風に震えているのを、時々見ていたから。
そうして、その固くねじられたものが蕾であることがはっきりと分かるくらいになると、春。
しかし、その頃の街の主役は桜、つつじたちは、ひっそりとその足元で出番を待つ。
つつじミサイル。
柔らかな布をきゅっとねじ上げたような、蕾の群れ。
花散らしの雨が降り、暖かな風が吹き荒れ、そうして、ある夜、いっせいに開く。
街は、つつじの国になる。
「好き、って言って。」
「好、き。」
「もう一回。」
「・・・好き。」
唇をむさぼりあいながら、好き、と何度も言わせる。
好きだから、好き、って言うんじゃないんだよ。
好き、って繰り返しているうちに、本当に好きになっていくんだよ。
あなたの上に身体を重ねながらそう口にすると、あなたのきれいな二重の瞳が優しく揺れて、笑顔になって、
「・・・好きって言わせようとしてるな。」
と、ささやいた。
そうよ。
好き、って言わせようとしてるよ。
好き、って言わせて、好きにならせて、その先に何があるのか、何も無い。
いつか、結婚する気があるのなら、そういうテクも覚えておいた方がいいよ・・・・。
そんなことを言おうとして、いたずらな指につかまってしまって、もう何も言えなくなる。
目を閉じて広がる、つつじの群れを感じる。
身体を重ねる関係に落ちていくことが開花なら、その先は、散るだけのこと。
真冬に出会い、ひとことずつふれあい、そうして開いたふたりであれば。
いずれは、散るただそれだけのこと。
梅雨の雨に打たれてみにくく茶色に変色し、もうそこに鮮やかな花の群れがあったことさえ忘れられる、そういうことだ。
好き、って言いなさい。
わたしを大輪の、真っ赤なアザレアにして。
あなたの気まぐれな腕の中で。
激しく揺さぶられて、雄雄しい花になる。
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