白つめ草
2004年4月27日 リーコとチョーコのお話 よつ葉探し 思ひ出探し 白つめ草
「フィーネとレインの話」から、今日は離れて。
リーコのこと。
新一年生になって、変わったことはいくつかあれど、一番変わったのが「お付き添い」しなくてもいいようになった、ということであろう。
ひとりでうちを出て、集団登校の待ち合わせ場所までひとりで行き、帰りもひとりで帰って来る。
これが幼稚園児だと、いちいちお見送り、お迎え、である。
その必要が無くなった。
公園にも、一人で行くようになった。
頃合いを見てお迎えには行くが、基本的に友達同士で待ち合わせて遊びに行く。
ところが、ここで、ひとつ問題が生じた。
リーコは、まだ上手に自転車に乗れないのである。
一年生ともなれば、大抵の子が自転車で移動する。
なので何とか幼稚園のうちに、ちゃんと乗れるようにしておきたかったのであるが、間に合わなかった。
「ママ、今日は自転車で行く、ってお約束したから。」
と、いきなり言い出されたとき、困ったな、と思った。あぶない、と言って止めさせるのは簡単だ。しかし、「お約束」である。子供の世界でも「お約束」はやはり守られるべきものであろう・・・もちろん、常識の範囲内で、の話ではあるが。
「・・・分かった。自転車で行けばいいよ。でも、ママがついて行く。」
そういうことに、なった。
想像していた通り、危なっかしいこと、この上ない。
いったん走り出せば何とか走るのであるが、こぎ出せない。止まれない。
走り出すまで、あちこちふらふらし、止まるまで、よたよたする。
幸い、公園には公道を通らず、マンションの敷地を抜けて行くことができる。自分もひかれそうになりながら、ついて行く。
さて。
自転車を停めて遊び出したので、こっちはチョーコの相手をする。
こいつは3才児なので、ほっぽり出してはおけない。
そんなに広い公園では無いが、子供たちが走り回ったり、ボール遊びをしたりは十分できる。
新緑が、まぶしい。
オウバイが、黄色い花をいっぱいにつけている。
地面にはいつのまにか、白つめ草がいっぱい。
ハナミズキが、淡く桃色に光っている。
ライラックは、紫色の房をゆらゆらと風に任せ、コデマリは、通りがかる子供たちに「おいで、おいで」をしている。
しばし、植物の輝きに目を奪われた。
そのとき。
ワーッ!
・・・と、歓声が聞こえた。
声は、複数の子供たち。
数本のユリノキを囲むようにして造られた小道の方から聞こえて来る。
何気なく見て、慌てた。
「リーコ!。」
リーコが自転車で暴走している。そのまわりを何人もの子供たちが併走している。自転車に乗っているのはリーコだけ。あとの子供たちは、必死で走り、よく見ると、リーコの自転車のハンドルに手をかけている男の子がいる。
つまり、ひとりの男の子が、リーコの自転車を引っ張って走らせ、そこに群がるようにして、子供たちがついて行っているのだ。
「あぶない!。」
と、思わず叫んだとたん、皆が倒れ込む。大変!
しかし。
駆け寄ろうとして、止めた。
笑っているのだ。
みんな、笑っている。
「・・・あと、もう少しやんか。」
「もっと、思い切って行かんと。」
男の子も、女の子もいる。みんな息を弾ませて笑っている。
「もういっぺん、やってみよ。絶対、乗れるようになるからな。」
リーコの友達が、自転車の練習を手伝ってくれているのだ・・・。
さらに、家に帰る時刻になったとき、小さな自転車の前かごに、白つめ草の花束があるのをみつけた。
「みんなが、よう頑張ったな、って、くれてん。」
「フィーネとレインの話」から、今日は離れて。
リーコのこと。
新一年生になって、変わったことはいくつかあれど、一番変わったのが「お付き添い」しなくてもいいようになった、ということであろう。
ひとりでうちを出て、集団登校の待ち合わせ場所までひとりで行き、帰りもひとりで帰って来る。
これが幼稚園児だと、いちいちお見送り、お迎え、である。
その必要が無くなった。
公園にも、一人で行くようになった。
頃合いを見てお迎えには行くが、基本的に友達同士で待ち合わせて遊びに行く。
ところが、ここで、ひとつ問題が生じた。
リーコは、まだ上手に自転車に乗れないのである。
一年生ともなれば、大抵の子が自転車で移動する。
なので何とか幼稚園のうちに、ちゃんと乗れるようにしておきたかったのであるが、間に合わなかった。
「ママ、今日は自転車で行く、ってお約束したから。」
と、いきなり言い出されたとき、困ったな、と思った。あぶない、と言って止めさせるのは簡単だ。しかし、「お約束」である。子供の世界でも「お約束」はやはり守られるべきものであろう・・・もちろん、常識の範囲内で、の話ではあるが。
「・・・分かった。自転車で行けばいいよ。でも、ママがついて行く。」
そういうことに、なった。
想像していた通り、危なっかしいこと、この上ない。
いったん走り出せば何とか走るのであるが、こぎ出せない。止まれない。
走り出すまで、あちこちふらふらし、止まるまで、よたよたする。
幸い、公園には公道を通らず、マンションの敷地を抜けて行くことができる。自分もひかれそうになりながら、ついて行く。
さて。
自転車を停めて遊び出したので、こっちはチョーコの相手をする。
こいつは3才児なので、ほっぽり出してはおけない。
そんなに広い公園では無いが、子供たちが走り回ったり、ボール遊びをしたりは十分できる。
新緑が、まぶしい。
オウバイが、黄色い花をいっぱいにつけている。
地面にはいつのまにか、白つめ草がいっぱい。
ハナミズキが、淡く桃色に光っている。
ライラックは、紫色の房をゆらゆらと風に任せ、コデマリは、通りがかる子供たちに「おいで、おいで」をしている。
しばし、植物の輝きに目を奪われた。
そのとき。
ワーッ!
・・・と、歓声が聞こえた。
声は、複数の子供たち。
数本のユリノキを囲むようにして造られた小道の方から聞こえて来る。
何気なく見て、慌てた。
「リーコ!。」
リーコが自転車で暴走している。そのまわりを何人もの子供たちが併走している。自転車に乗っているのはリーコだけ。あとの子供たちは、必死で走り、よく見ると、リーコの自転車のハンドルに手をかけている男の子がいる。
つまり、ひとりの男の子が、リーコの自転車を引っ張って走らせ、そこに群がるようにして、子供たちがついて行っているのだ。
「あぶない!。」
と、思わず叫んだとたん、皆が倒れ込む。大変!
しかし。
駆け寄ろうとして、止めた。
笑っているのだ。
みんな、笑っている。
「・・・あと、もう少しやんか。」
「もっと、思い切って行かんと。」
男の子も、女の子もいる。みんな息を弾ませて笑っている。
「もういっぺん、やってみよ。絶対、乗れるようになるからな。」
リーコの友達が、自転車の練習を手伝ってくれているのだ・・・。
さらに、家に帰る時刻になったとき、小さな自転車の前かごに、白つめ草の花束があるのをみつけた。
「みんなが、よう頑張ったな、って、くれてん。」
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