夏の庭
2004年8月23日 ニチジョウのアレコレ夏の庭 生死織り成すタペストリ
北陸育ちだと言うと、
「涼しくていいでしょう」
と言われることがある。そのたびに、
「いいえ、夏は神戸と同じくらい、暑いですよ」
と答えてきたが、今回、やはり北陸の夏は涼しいような気がした。
実家の庭で、大きな石に座って、ぼんやりと空を見上げて。
空が、近い。
なぜだろう。
神戸の家の方が、高い位置にあるのに、地面にくっついている実家の庭の方が、空が近い。
足元に、ネコが来る。
そして、しなやかに通り過ぎる瞬間、そっと膝に触れて行く。このネコとわたしとの間にだけ存在するたぐいの親密な時間というものがあるのだ。そのことに、少し感動する。
キュウリと朝顔が絡み合っている。
紫陽花が夏の激しい太陽の下で枯れ残っている。
そばのカイズカイブキの葉に、蝉の抜け殻がしがみついた姿勢で残され、そのすぐ脇の湿った土の上に、小さな小さなアマガエル。
ネコがどこかに行ってしまい、残されたわたしの足元には、たくさんの、蟻の巣。
街に住み、そこにある季節をみつめて、十分に季節のいいものは揃っていると思う。
だけど、生き物たちが季節ごとに繰り返すドラマの数は、やはり田舎にかなわない。
それでも、庭を後にして車に向かって歩くとき、足元の土の柔らかさを感じ、ヒールを気にするわたしがいる。
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