朝顔の時を選べず紅に白

  どうして、よりによってこんな朝に咲いてしまったのだろう、と心があれば思っているかもしれない。
  台風の通過している朝。最早、ツルを伸ばしたいだけ伸ばし、巻きつけたいだけ巻きつけているがために、ベランダから室内に避難させることもできない、朝顔たち。
  強風に煽られ、前後左右にいいように振り回されてもてあそばれながら、必死に咲いている。
  花にも、生まれ持った宿命というようなものがあるのかもしれない。
  穏やかに晴れ渡った真夏の朝。ラジオ体操に行くときに子供がみつけて歓声をあげる。
  「今日も咲いてる!。」
  そういう花もあるのに。
  今日のように、悪天候の中、開いた瞬間から暴風と戦うように咲かなくてはいけない花もある。あるいは、家人が旅行などで留守にしている朝に咲くタイミングになってしまう花も。

  朝顔の、花の命は短い。
  その上、同じ日が二度と無いように、同じ花も二度と無い。

  「出逢うときを間違えたのかも。」
  そう言いたくなるような恋に、想いがつながっていく。
  恋が咲いた瞬間から、永遠を望めない関係というものがある。どうにもならなくて、それでも咲きたくて。

  おそらく、恋にも、背負った宿命というものがあるのだろう。このときにしか、生まれ得ない恋の運命というものがあるのだろう。

  嵐が去ったあと。
  無事を確認するために朝顔の前に座り込むと、そこには種があった。何日か前に咲いた花のものだ。花は一日も持たずに散っても、確実に実を残している。それは来年、また鮮やかな花を咲かせることができるのだ。小さな粒の中に、花の未来が畳み込まれているのだ。

  ヒトの恋は、終わっても後に何かを残すことなどできないのに。花とはなんとしたたかで魅力的な営みをするものなのだろう。

  生まれ変わったら、花になりたい。
  そう言ったら、あのひとは一体、なんて答えるだろう。
  
  

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