虫の声
2004年9月4日 内科医レインと人妻フィーネの物語ーツ・ナ・ガ・ル 好きだよ、の囁きを消す虫の声
今度逢ったときには、ちゃんと目を見て、好きって言って。
そうメールで伝えておいたのに、なかなかそうしてくれない。
ベッドの中で、とろけそうなキスを繰り返してから、待ちきれずにねだって、やっと言ってくれた、好きだよ。
好きだよ。
好きだよ、逢いたかったよ。
言葉と吐息とが、ふたつの唇の間を行き来する。
あなたは、わたしに抱かれるのが好きだね。
女はそう思う。
シャワーを浴びて、ベッドに行くと、いつも男は仰向けで待っていて、両腕を広げて抱きしめる。そのまま、キスへつながっていくとき、女が男の身体の上になり、そっと唇を下ろしていくのが二人のスタイル。しかも、いつも、男の目は閉じられて、静かに女の唇を待っている。
あなたは、視姦、ということをしない。
夫が、両腕を縛るようになったのは、このひとを知ってからだわ。
他の男に抱かれていることに、気が付いたのかもしれない、何も言わないけど。
夫は、妻が就寝してすぐの、眠りが深い時を選んで、タオルできつく両腕を縛る。そして、容易に結び目がほどけないことを確認してから、おもむろに犯し始める。時々、下着を替えさせることもある。クローゼットから、気に入ったものを選んで来て、穿き替えさせて、そのまま脱がさずに隙間から指を差し込んで、抵抗する妻を楽しむ。
そういう趣味は、無いんだけど。
たまりかねて言ったことがある。夫は、ただ笑っているだけ。昼間の夫は、物静かでおとなしい。
女の身体は、構造上、入ってくるものを拒めないけれど。
気持ちの上では、受け入れられる身体は、ひとつだけだという気がする。
どんなに過激な演出を寝室でほどこされても、何一つ感じない。義務のセックスであることに変わりはない。
罪を承知で、それでも思う。
夫とは、何度寝なければいけないの?
あなたとは、何度寝ることができるの?
命が終わるまでに・・・。
あなたの、指先だけでイカされてしまう。
職業上、肌に触れなれているその手は暖かく、触れ方には無駄が無くて、触れる場所は確実で、一瞬の愛撫で全身に電撃が走る。
好きよ。
好きだよ。
一度満たされているのに、もっと欲しいと身体じゅうが震える。
今度は俺を満たしてくれというふうに、男が女を導いていき、女の唇が、男の感じやすいパーツをとらえて静かにしめつけ始める。
やがて、男の口から、快感のうめき声がもれるまで、唇は角度や強度を微妙に変えながら、それを離さない。
窓の外では、虫の声。
夜いっぱいに響き渡れとばかりに、震えながらあふれている。
ね、あの声も、翻訳すれば好きだよ、ってことなんだよね。
ふいに唇を離してそう言うと、閉じられていた目をそっと開いて、そうかもね、と返事をくれたあと、おもむろに起き上がり、優しく押し倒された。
今度逢ったときには、ちゃんと目を見て、好きって言って。
そうメールで伝えておいたのに、なかなかそうしてくれない。
ベッドの中で、とろけそうなキスを繰り返してから、待ちきれずにねだって、やっと言ってくれた、好きだよ。
好きだよ。
好きだよ、逢いたかったよ。
言葉と吐息とが、ふたつの唇の間を行き来する。
あなたは、わたしに抱かれるのが好きだね。
女はそう思う。
シャワーを浴びて、ベッドに行くと、いつも男は仰向けで待っていて、両腕を広げて抱きしめる。そのまま、キスへつながっていくとき、女が男の身体の上になり、そっと唇を下ろしていくのが二人のスタイル。しかも、いつも、男の目は閉じられて、静かに女の唇を待っている。
あなたは、視姦、ということをしない。
夫が、両腕を縛るようになったのは、このひとを知ってからだわ。
他の男に抱かれていることに、気が付いたのかもしれない、何も言わないけど。
夫は、妻が就寝してすぐの、眠りが深い時を選んで、タオルできつく両腕を縛る。そして、容易に結び目がほどけないことを確認してから、おもむろに犯し始める。時々、下着を替えさせることもある。クローゼットから、気に入ったものを選んで来て、穿き替えさせて、そのまま脱がさずに隙間から指を差し込んで、抵抗する妻を楽しむ。
そういう趣味は、無いんだけど。
たまりかねて言ったことがある。夫は、ただ笑っているだけ。昼間の夫は、物静かでおとなしい。
女の身体は、構造上、入ってくるものを拒めないけれど。
気持ちの上では、受け入れられる身体は、ひとつだけだという気がする。
どんなに過激な演出を寝室でほどこされても、何一つ感じない。義務のセックスであることに変わりはない。
罪を承知で、それでも思う。
夫とは、何度寝なければいけないの?
あなたとは、何度寝ることができるの?
命が終わるまでに・・・。
あなたの、指先だけでイカされてしまう。
職業上、肌に触れなれているその手は暖かく、触れ方には無駄が無くて、触れる場所は確実で、一瞬の愛撫で全身に電撃が走る。
好きよ。
好きだよ。
一度満たされているのに、もっと欲しいと身体じゅうが震える。
今度は俺を満たしてくれというふうに、男が女を導いていき、女の唇が、男の感じやすいパーツをとらえて静かにしめつけ始める。
やがて、男の口から、快感のうめき声がもれるまで、唇は角度や強度を微妙に変えながら、それを離さない。
窓の外では、虫の声。
夜いっぱいに響き渡れとばかりに、震えながらあふれている。
ね、あの声も、翻訳すれば好きだよ、ってことなんだよね。
ふいに唇を離してそう言うと、閉じられていた目をそっと開いて、そうかもね、と返事をくれたあと、おもむろに起き上がり、優しく押し倒された。
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