秋麗や 海の航跡 空にもまた

 
  真昼の穏やかな波が、しなやかに踊っている。
  フラ・ダンスのダンサーの、左右に揺れる両腕を思い出させる動き。洗濯物を干す手を止めて、しばらく海に心を泳がせる。
  クレーンがひっきりなしにコンテナを吊り上げ、せわしそうな陸の動きとは対照的に、沖を通るタンカーはどれも静かに、その巨体をゆっくりと沖へ向かってすべらせて行く。

  秋の午前中。
  こうして、海を眺めていると、つい時間を忘れてしまう。
  いけない。掃除もしなきゃいけないのに。
  洗って糊付けしたシーツを広げて、丁寧に物干し竿にかけていく。
  つい最近までの、痛いほどの日差しを浴びせかけられていたことが嘘のよう。優しい光の降り注ぐ東向きのベランダからは、かっきりと澄んだ空を悠々と渡る雲の群れも見える。
  そして、どこへ向かった飛行機なのだろうか、白い飛行機雲が、一直線に山の方から海の方へ走っているのも、見える。

  あの雲をつくった飛行機の中には、たくさんのひとがいて、みんな、それぞれがそれぞれの想いを抱えて、いっしょに空を飛んで行ったのだなあ、と思うと、なんだか不思議。

  そして、飛行機が、人たちと心たちを乗せてはるか遠くに飛び去ってしまった後には、白くくっきりとそのしるしが残され、やがて跡形も無く消えていく。

  それは、こうしてPCの前で綴っている行為に似ている。

  確かに、わたしは、此処にいる。
  だけど、それは、いつしか消えるもの。跡形もなく。
  

  「不倫日記」は、今やそれだけで一ジャンルを作っているほどのにぎわいである。
  そもそも、不倫、という行為は、表向きは何も変えずに、全くの水面下で行われる行為であろう。
  なので、第三者が目を通す媒体を使い、そのことをあからさまに公表するのは、本当はNGなのである。
  しかし、そこは「匿名」の良さ、誰が書いているのか分からないから誰も傷つけない、ということで、「秘密の恋の隠しておけない胸のうち」をネットに曝す、ということになる。
  そこまでは、わたしも破廉恥な内容のものを平気で書いている身(ただし、事実ではない)であるから、否定は、しない。
  だけど、ひとつだけ言いたいことがある。

  「不倫日記」の作者たちよ、恋愛がうまくいっている間だけノロケまくって、縛られただの、あそこをどうされた、だの、書くなよ。
  その恋愛が破綻していくとき、その過程についても、そのセックスシーンと同じくらい、リアルに書けよな。
  第三者に、自分を曝すのだから、そのくらいの覚悟して臨めよ、でなきゃはじめから書くな。

  雲は、いつかは消えるもの。
  だけど、ある日見たひとつの雲のひとひらが、心に刻み込まれてずっと消えないこともある。
  目に「入る」とは、そういうことだ。

  

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